営業部に配属されたT山君。入社して三ヶ月、いよいよ一人で営業に出ることに。新規クライアントに足繁く通った結果、大型販促イベントのプレゼン参加権を得ました。そこでT山君はこれまで教え込まれてきたノウハウだけでなく、T山君オリジナルの観点も盛り込んだプレゼンを実施したところ、見事受注。
後日、営業部長から「若手ながら大型案件を受注出来たことは他の社員にもいい影響になる」と今回のプレゼンの成功を分析したレポートを作成し、社内ノウハウとして共有するようにと命じられました。T山君は、参考にしたビジネス本のプレゼンノウハウや、業界分析に利用した新聞記事を抜粋し、渾身の一大レポートを作成。まずは同僚3人にコピーしたレポートを配布し読んでもらったところ、ぜひとも今後の参考にしたいと大好評。そこでT山君は、早速に色んな人に見てもらえればと、社内共通フォルダにレポートをアップし、社員掲示板に、今回のプレゼンのノウハウを皆で共有したいと書込みをしました。
すると、部長に呼び出され、ファイルを社内フォルダから即刻削除するように言われるではありませんか。
さて、一体どうしたことでしょう?
ネット環境を活用した情報共有・交換が簡易になり、会社内・部署内での情報・知識の共有が、ナレッジマネジメントとして推奨される時代となりました。ただ、気をつけないと著作権法の観点から問題となるケースがあるのです。
まずはT山君のケースでは、何が問題だったのかをみてみましょう。
T山君は、参考にしたビジネス本のプレゼンノウハウや、業界分析に利用した新聞記事を抜粋し、渾身の一大レポートを作成。
社内において、雑誌の切り抜きが含まれた資料をコピーするという行為が著作権侵害になるおそれがあります。
営利目的じゃないから問題ないのでは・・?と思われがちですが、そうではありません。営利・非営利問わず、コピーする行為自体が著作権者の複製権(21条)を侵害する可能性があります。
同僚3人にコピーしたレポートを配布し読んでもらった
コピーしたものを配布するという行為が著作権侵害になります。配布した人数がたった3人でも?と思われるかもしれませんが、人数が問題なのでははありません。家庭内又はこれに準ずる範囲を超えている場合、(業務上の利用)であれば、たとえ2,3人であっても複製権の侵害になります。(30条)
ただし、社内の打合せの資料の一部に使うだけでも駄目なのかどうか?ということはとても微妙な問題です。この場合、「一部」という言葉がキーワードとなります。いくつかの要件を満たすことで、著作物の引用(32条)に該当し、著作権者の許諾無しに著作物の利用が認められることがあります。
社内共通フォルダにレポートをアップ
社内共通フォルダに雑誌・新聞の切り抜きが含まれた資料をアップしたという点が問題です。
「含まれた」資料という点が、上記の社内打合せ資料のケース同様、微妙なケースとなります。切り抜きで使われた素材が、最終的にできあがった資料の補足的なものであれば著作物の引用に該当し、侵害には該当しない場合があります。
ほかにもT山君の事例以外で、考えられる社内での著作権侵害の例ではこんな事があります。
書籍、雑誌の切り抜きを社内で回し読み
著作権法では著作権者に許諾を得ることなく著作物をコピーする行為を「複製権」の侵害行為としております。今回のように切り抜きを回し読みする場合は、コピーしている訳ではないので複製権の侵害には該当しません
他サイトに掲載されている記事のリンク先をメールで共有
URLを共有するだけなら問題ありませんが、例えばリンクURL周辺に著作物に対して批判したり、罵倒する行為があった場合、著作者の人格権を侵害する可能性があり得ます。
この「情報共有の落とし穴」に落ちてしまうとこんな裁判沙汰になります




