パロディ・フォトモンタージュ事件

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引用・改変の定義

1980年3月28日

事件番号

昭和 51年 (オ) 923号 損害賠償

要約

“引用”と認められるためには、自己の著作物と利用する側の著作物の間に明確な区別が必要であり且つ、前者が主、後者が従となるような関係が認められる必要がある。

原判決を破棄する。
本件を東京高等裁判所に差し戻す。

上告代理人竹澤哲夫、同千葉憲雄、同望月千世子の上告理由第三点について 一 原審は、
(一) 上告人は、自ら撮影して創作しその著作権を取得したカラー写真を原判決添附写真(1)のような縦約三〇センチメートル、横約三七センチメートルのカラー写真としたうえ、昭和四二年一月一日付株式会社実業之日本社発行の写真集「SKI’67第四集」に複製掲載して発表したほか、その後右複製写真における左側部分約五分の一を切除し残部をやや拡大して縦横約三七センチメートルの写真にしたうえ、上告人の氏名を表示しないでアメリカン・インターナシヨナル・アンダーライターズ社発行の昭和四三年度用広告カレンダーに複製掲載したところ、被上告人は、右カレンダーに掲載された写真を利用し、その左側部分の一部約三分の一(後記「SOS」掲載分)又は六分の一(後記「週刊現代」掲載分)を切除してこれを白黒の写真に複製したうえ、その右上にブリジストンタイヤ株式会社の広告写真から複製した自動車スノータイヤの写真を配して合成して原判決添附写真(2)のような白黒写真(以下「本件モンタージユ写真」という。)を作成し、これを昭和四五年一月ころ発行した自作の写真集「SOS」に掲載して発表したほか、株式会社講談社において発行した「週刊現代」同年六月四日号にも掲載して発表した、
(二) (ア) 本件モンタージユ写真は、上告人が創作して複製した前記各写真(以下「本件写真」という。)とは別個の、そのパロデイというべき被上告人の創作にかかる被上告人自身の著作物であるから、旧著作権法(明治三二年法律第三九号、以下単に「法」という。)30条1項第二にいう「自己ノ著作物」に該当し、
(イ) 本件写真は、本件モンタージユ写真の素材として利用されたものであるが、このような利用は右規定にいう「節録引用」に該当し、(ウ) 本件モンタージユ写真の作成はその目的が本件写真を批判し世相を風刺することにあつたためその作成には本件写真の一部を引用することが必要であり、かつ、前記のような引用の仕方が美術上の表現形式として今日社会的に受けいれられているフオト・モンタージユの技法に従つたものとして客観的に正当視されるものであつたから、他人の著作物の自由利用として許されるべきものと考えられ、右引用にあたり本件写真の一部が改変されたことも、本件モンタージユ写真作成の右目的からみて必要かつ妥当なものであつたということができ、原著作者たる上告人の受忍すべき限度を超えるものとは考えられないから、その同一性保持権を侵害するものとはいえず、したがつて、被上告人の前記本件写真の利用は右規定にいう「正当ノ範囲」を逸脱するものではない、
(三) なお、被上告人が素材として利用した前記カレンダーに掲載された写真には上告人の氏名の表示がなかつたのであるから、被上告人は、これをその出所を明示することなく利用することを許諾されていたものというべきである、
との趣旨の認定判断をし、上告人の被上告人に対する著作者人格権侵害を理由とする慰藉料支払の請求を棄却すべきものであるとしたことが原判文に照らし明らかである。
二 そこで、所論にかんがみ、原審の判断の当否について検討する。
法30条1項第二は、すでに発行された他人の著作物を正当の範囲内において自由に自己の著作物中に節録引用することを容認しているが、ここにいう引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうと解するのが相当であるから、右引用にあたるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならないというべきであり、更に、法18条3項の規定によれば、引用される側の著作物の著作者人格権を侵害するような態様でする引用は許されないことが明らかである。

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